12月の展示紹介
12月はベアトゥス黙示録写本群のうち比較的初期の10世紀後半に製作された4冊を展示します。 あわせてに加えて、挿絵入り黙示録写本の最初期の写本2冊を展示します。
【1】ベアトゥス黙示録註解書写本から
(1)ジローナ写本 975年製作 114点の挿絵はほぼ完全な姿で残っており、写本の大きさも縦が約400㎜もあり、12世紀以降に制作されたマンチェスター写本などを除けばウルジェイ写本と並び当時最大の写本でした。
(2)ウルジェイ写本 10世紀第4四半期制作 10世紀後半にスペイン北部のアストゥリアス東部で作られた。ロマネスク様式のモサラベ風の90の彩色挿絵が描かれています。キリスト論の系譜の序文とダニエル書の解説とともに、黙示録に関するベアトゥスの註解テキストが書かれています。
(3)コゴーリャ写本 10世紀第4四半期に書かれ始め、途中200年近く中断され他の地12世紀第1四半期に製作が再開された写本。 そのために49点の挿絵がありますが、前半はモサラベ様式の画風で、後半はロマネスク様式となり、挿絵の画風が大きく変わっています。
(1枚目が10世紀の挿絵、2枚目が12世紀の挿絵)
(4)エスコリアル写本 950年頃(~10世紀後半) エスコリアル写本の挿絵は、モーガン写本やジローナ写本と違い、青や赤はあまり使用されず、代わりに黄色や泥がかった茶色・ダークグリーンに塗られ、それはのちのコゴーリャ写本にも受け継がれます。
【2】最初期の黙示録写本
(1)トリーア黙示録写本 9世紀紀初期に制作された、残存する挿絵入り黙示録写本で一番古い写本。
テキストと挿絵は、見開き頁に互いに向き合って配され、一葉ごとに全頁大の挿絵が、fol.20vまでは裏葉に、fol. 21r以降は表葉に施されている。
(2)ヴァランシエンヌ黙示録写本 9世紀初頭(第1四半期)にフランスあるいはドイツで制作されたカロリングスタイルの黙示録写本。トリーア写本と共に、黙示録の完全なテキストと挿絵を伴う残存する最初期の彩色写本。