レオナルド・ダ・ヴィンチの手稿、素描・素画についてはファクシミリ版がすべて出版されていますが、結構高価なのと、日本ですべて発行されているわけでもないのでなかなか手にすることが難しいです。ここではその中でも比較的手に入れやすいものを紹介したいと思います。

【1】鳥の飛翔に関する手稿
サイズ   :21.3×15.3cm
紙葉枚数   :20紙葉(表紙を含む)
年代    :1505年
内容    :鳥の飛翔に関する力学 その他
1979年の岩波版です。 革装の貼り箱と本体です。本体は解説部分と、ファクシミリ版を収める部分が一体になっています。
     

手稿は20紙葉が2か所で中綴じされています。表紙も紙です。紙は厚手のもので表面もざらつきがおおきく当時の紙質も再現しているようです。
   

内容は鳥が飛ぶメカニズムの研究が主です。ただ。文字は例によって鏡文字で、上下もよくわからない状態です。
           

【2】トリヴルツィオ手稿
サイズ   :20.0×14.0cm
紙葉枚数   :51紙葉(オリジナルは62葉とのこと)
年代    :1487-1490年ころ
内容    :語彙集 その他
岩波版もあるのですが、なかなか市場に出ず、たまたま目にしたイタリア版を購入しました。解説もイタリア語なのでさっぱりわかりませんが、図書館に岩波版があったので、そちらで解説は読むことにしています。(貸出禁止なので、なかなか見れませんが)
造本は先の手稿と同じタイプです。

手稿は表紙が羊皮紙で、本体が5つの折り丁に分けられていて、2本のテープを芯にして糸でかがっています。表紙は革ひもと木で閉じられるようになっています。この辺も当時の姿だとするとレオナルドが実際に使っていた姿が思い浮かび、大変興味をそそられます。
 
内容は単語帳のような部分が大半で、そのほか軍事と教会建築に関する考察が書かれているそうです。

【3】レスター手稿
サイズ   :29.5×21.8cm
紙葉枚数   :36紙葉
年代    :1505、1507-8年
内容    :天文、地殻、河川、湖水、海洋
ビル・ゲイツ氏が30億円以上で購入した、個人の所蔵する唯一の手稿です。
このファクシミリ版はネットで購入したのですが、手元に届くまでは少し不安でした。届いた手稿は綴じられた状態ではなくばらばらの状態で、布にまかれているものでした。紙も当時のものを再現しているようで、下手に触ると壊れてしまいそうです。透かし模様の入った紙が使用されているようですが、そこまで再現されているかは未確認です。

この手稿については、2005年に東京で開催された「レオナルド・ダ・ヴィンチ点」でオリジナルが日本初公開されています。私は知らなかったので見る機会を逃しました。この時の解説本のなかに6ページ分の日本語訳と、全紙葉の解説があり大変重宝します。
この解説本には、豪華版として全紙葉を印刷したファクシミリが付属しているバージョンがあります。直筆が見れるのですが、今回のものと比較すると少し縮小されているのがわかりました。

【4】マドリッド手稿
サイズ   :21.0×15.0cm
紙葉枚数   :Ⅰ184葉、Ⅱ157葉
年代    :Ⅰ 1490年 – 1508、Ⅱ 1491年 – 1505年
内容    :Ⅰ時計を含む種々様々な機械構造と機械理論に関する考察
Ⅱアルノ川の流れを変えるプロジェクト、『アンギアーリの戦い』、透視図法と光学、フランチェスコ・スフォルツァ(Francesco Sforza)の騎馬像鋳造など
岩波版です。【1】~【3】のファクシミリ版のように造本・紙質・形状からオリジナルを模したものではなく、手稿の写真を印刷したもので、紙質は普通の本(少し厚手ですが)とおなじです。
この写本は長らく行方不明であったのが、1966年にスペイン、マドリッドの国立図書館で再発見されたそうです。それまで存在が知られていなかったのは、誤った名前で収蔵図書目録に記載されていたためとのことで、なんとも不思議ないきさつです。
赤の革装です。第1、第2巻はファクシミリ巻、第3巻は解説、第4巻、5巻は本文翻刻と日本語訳となっています。

第1巻です。

第2巻です。

この手稿は、スペイン国立図書館からデジタル公開されています。レオナルドのオリジナルのデッサンが手軽に見ることができます。
レオナルドの手稿はそのほかにも大量にあるのですが、一部を図書館でも見ることができます。私が知っているので一番感激した(びっくりした)のは、愛知県立図書館がパリ手稿を所蔵していることでした。これは12冊の手稿集(全964頁)を総称しているのですが、いろいろな大きさ・装丁の手稿がオリジナルの状態で再現されていて、貴重書スペースでですが手に持ってみることができます。すこし遠いので頻繁に見に行くことはできませんが、いつでも見ることができると思うとなんとなく安心していれます。

【追加】「アランデル手稿」については大英博物館からデータ公開されていました。すこし薄い感じがしますが全文が見れるようです。
「鳥の飛翔に関する手稿」もNational   Air   and   Space   Museumから公開されています。
また「マドリッド手稿」についてもⅠ巻のみですが、コーネル大学図書館からダウンロードできます。
「フォスター手稿」についてはこちらに紹介のサイトがあります。