ライブラリー リエバナ 12月の展示内容お知らせ
ヨーロッパ中世の彩色写本をファクシミリ版を中心に展示しているライブラリーリエバナです。
11月度の展示のお知らせです。
12月の開館日(予定):日・水・木・金曜日
2日(金)、23日(金)は午後からの開館、4日(日)はお休みです。
今月は初期・中期・後期のベアトゥス写本に合わせて、その前後に作成された黙示録写本も一緒に並べ、中世の黙示録写本の大きな3つの系譜を見てもらおうと思います。
まず初期中世黙示録写本群から2冊です。
(1)ヴァランシエンヌ黙示録写本
9世紀初頭に制作されたカロリングスタイルの黙示録写本で、トリーア黙示録写本と共に残存する最初期の挿絵入り黙示録写本です。
42葉の羊皮紙に38の全頁挿し絵が描かれています。
(2)バンベルグ黙示録写本
カロリング朝美術に続くオットー朝美術の黙示録で、挿し絵入りとして現存する唯一の写本。オットー3世が制作を依頼した豪華写本で、完成はヘンリー2世の元1000年~1020年の間と考えられています。106葉に47点の挿絵が描かれており、どの挿絵も金色の地が特徴です。
続いてベアトゥス黙示録註解書写本群から3冊展示します。
(3)モーガン写本
マドリード写本と並ぶベアトゥス黙示録註解書の初期の完本写本で、940-945年頃の作と考えられている。奥付けに写字・挿画をMAIUS(マイウス)が行ったとの署名があります。
マドリード写本は枠取りのない挿絵が主でしたが、モーガン写本では挿絵に枠取りをして、画面の地を幾つかの帯状色面で抽象的に処理する手法で描かれ、輝くばかりの色彩効果や破綻なく図像をまとめ上げる構図上の機能などにおいて、以降の写本の手本になったといえる写本です。 (参考:安發和徹モーガン図書館のベアトゥス写本挿絵《天上のエルサレム》について)
(4)ファクンドゥス写本
11月に引き続きの展示です。
13世紀に制作されたラス ウェルガス写本を除くと、修道院ではなく王室の依頼で制作された唯一のベアトゥス写本で、1047年頃の作です。 系統はモーガン写本と同じⅡa群です。
大きさは他の写本と比較しそれほど大きくはありませんが、全312葉と一番大部な写本になっています。
金・銀・紫がふんだんに使用され、豪華な挿絵が98点描かれています。
(5)カルデーニャ写本
1175年から1185年の間という比較的遅い時期に作成されたベアトゥス写本の中のひとつ。
51点におよぶ細密画は極めて美しく、 本書の製作に関わった装飾画家たちの技術の高さと繊細さ・緻密さを物語っており、 赤・青・緑の色調が金箔の輝きと一体化した活気のある鮮やかな図像が特徴です。
最後に13世紀イギリスに端を発して流行した英仏黙示録写本群から2冊です。
(6)パリ黙示録写本(MS.fr.403)
13世紀に突如流行となった英仏黙示録の初期の写本。
黙示録の前後に挿入されたヨハネの生涯を描いた部分は、2段構成の全頁大挿絵(いわゆる「ピクチャー・ブック」形式)が配され、黙示録本文は半頁大の挿絵を丈夫に配して、下部にダブル・コラムでテキストを配している。
(7)ゲッティ黙示録写本(ダイソン・ペリン黙示録)
13世紀から流行した英仏黙示録の一つで、「ドゥース黙示録」より少し早い時期に制作された同系統の写本。
41葉の上半分に彩色挿絵が描かれ、下半分に黒インクで黙示録本文が、赤インクでベレンガウドゥスの註解書が書かれています。
また、金・銀は、光輪や王冠・剣などに限られて使用されています。初めの1葉に、ヨハネがパトモス島に来る経緯が簡単に書かれています。
以上の7点の黙示録写本を展示します。
他に時祷書としてヴィスコンティ時祷書を展示します。この写本はミラノ公ジャン・ガレアッツォ・ヴィスコンティ(1351-1402)の注文で、ジョヴァンニーニョ・デ・グラッシとベルベッロ・ダ・パヴィアという2人の画家が手掛けたものです。
民間の裕福な人のために写本が作られた時代の、個人的な時祷書の典型的な例です。
ヨーロッパ中世の写本の世界が味わえます。
場所は、豊田市駅からすぐ近くのVITS豊田タウンの地下1階(市民ギャラリー前)です。 外階段から降りて頂くと便利です。ぜひお越しください。